日本武道館前の小粋な天使たち
お元気ですか?
あの日はお世話になりました。
あなたのおかげでほんとに素敵な夜を過ごせたことを、今も忘れず、感謝しております。
お元気ですか?
日本武道館前の優しい天使のみなさん。
私がついに念願叶って、子供の頃からのヒーローだったボブ ディランの来日公演を初めて観たのは、1994年のことである。
何事においても、常に世の趨勢の最先端をゆく私は、20年以前既にして、当たり前の如く格差社会に苦しむ貧乏な若者であったw
それでも相手は神様だ。
万難を排してでも公演に駆けつけなければならない。
それがまた、ディランズ チルドレンのひとりと自称する私のアイデンティティでもあった。
なんとかピアの先行予約(意味不明の方々も増えたらしい)で入手したチケットは、ステージから遙か離れたスタンド席であった。
たしか…たしか当時のお金で、15000円だったと記憶していないwまぁ、そんなもんだ。w
当日、例によって時間にルーズな私が日本武道館の観客入場口に到着したときには、既に大部分のオーディエンスは入場済みであたりは閑散としていなかったw
「にいちゃん、にいちゃん、買うよ買うよw」
「アリーナあるよ、アリーナ!!にいちゃん、アリーナどう?」
そう、いわゆるダフ屋のお父様方の威勢の良い掛け声!
で、普通のコンサートなら、そをお囃子にして入場してしまうのが常の私なのだが、あの、金色の玉ねぎマジックに誘われたか、
(アリーナっていくらか、訊くだけ訊いてみようか?)
「おじさん、アリーナっておいくらですか?」
きっとこのとき私の瞳は、母犬に甘えたがっている子犬のように潤っていただろう。
「ん?アリーナ?7万だ!」
思わず私は吹き出して、
「ごめんなさい、全然だめだ。だって俺、お財布に1万しか入って無いもんw」
その一言で我々は縁なき素生と化すだろ、という私の厭世感wは、しかし次の言葉で覆された。
「あゝ?ほんとに1万しかねーのか?財布見せてみろ!!」半ば強制的ではあったがw
なんらやましいwところの無い私は、素直に財布を渡すと、
「なんだよ、マジで1万しか入ってねーよw……わかったよ、わかりましたよ、いいよ、アリーナ1万で!持ってけよ、このドロボー!!wだけど今持ってるチケットちょうだいねw」
私は未だに、あの業界の利益の出し方すなわちしのぎのシステムを知らないのだが、とにかく媚びへつらい、慌てなければならない立場が一気に逆転したと感じ、
「ええっ!?だってアリーナでしょう?お父さん、マジで1万円でいいの?」
「だって仕方ねぇじゃん、にいちゃん、本当に1万しか持ってねぇんだもん」
「だけど……」
「いいからよ、にいちゃんのチケット早くくれ。で、これ持ってさっさと行かねぇと、舞台が始まっちまうぞ!!心配すんな、間違いなくアリーナ入れっから。万一なんか言われたらよ、ここにいるからすぐ戻って来い!わかったら早く行け!!」
お父さんの口の利き方はイライラしてとても乱暴だったが、その双眸は、まるで孫を送りだす好々爺のそれだったことを、今でも私ははっきり覚えている。
日本武道館前の小粋な天使たち
おかげですてきな夜でした
そうです、生涯忘れ得ぬ夜なのです
それは
ボブが目の前にいたからだけではありません
彼のパフォーマンスが素晴らしかったからだけではありません
日本武道館前の小粋な天使たち
皆さんにお会いできたこと
ありがとう
今後も手入れ?wに負けず、頑張ってくださいね
貧乏人はいじめないでねw
心優しき
日本武道館前の小粋な天使たち